サーバルーム発熱対策あれこれ ~IT機器冷却の種類はどんなものがあるの?~

T. Mogi

皆さまは「サーバルームの冷却とは」、と聞かれたらどんなことをイメージしますか?
釈迦に説法かもしれませんが、サーバルームはヒトへの空調ではなく、IT機器(産業用)への空調です。
IT機器は能力に差こそあれ、電力で稼働するもののため、熱が発生します。
つまり、熱を冷却することを考えなければなりません。
「サーバルーム空調とは、IT機器冷却だ」と言っても問題はないでしょう。

では、「IT機器を冷却する装置とは」、と聞かれたらどんなことをイメージしますか?
多くの人は、サーバルーム壁面に設置してある大型の床下に冷送風するサーバルーム用空調設備を想像するかもしれません。
もちろん、正しいですし、間違っていません。
しかし、ラック当たりの発熱が1kW~2kW程度だった昔のサーバルームとは違い、今ではIT機器の性能、密度あるいは負荷によって、もっと高い冷却熱容量を要求されることがほとんどです。
その場合、床下送風のサーバルーム用空調設備では、要求される熱容量によっては、様々な課題が生ずることになり、健全性を失うことになりかねないのも、今では事実だと言えます。

サービスの内容や建物(データセンター)の設備によって、実現が可能かどうかは細かい要件整理が必要となりますが、様々なIT機器冷却の種類を理解することは重要です。
ざっとではありますが、どんなものがあるのか、触れていきたいと思います。

 

CRAC(Computer Room Air Conditioner)

サーバルーム用の空冷空調設備です。
多くの方が想像する、床下送風の空調設備が主流です。
空冷空調機となりますので、屋外に設置する、室外機もセットになります。
空調機1台当たり40kW~80kW程度の冷却ラインナップがありますが、ラック1架あたり10kW程度までの冷却が限界とも言われています

 

CRAH(Computer Room Air Handling)

サーバルーム用の水冷空調設備です。
大きなオフィスビルや公共施設などで使用されている、大型空調(エアハンドリングユニット)を思い浮かべていただけると、イメージが近付きやすいかもしれません。
空調機1台当たり40kW~100kW程度の冷却ラインナップがありますが、CRACと同様に、ラック1架あたり10kW程度までの冷却が限界とも言われています。

 

InRow

ラック間に設置する空調設備になります。
IT機器は、基本としては前面吸気、背面排気となりますので、よりラック近傍から吸気と排気を処理できると、効率が高いといえます。
ラック間への空調設置ということになりますと、壁面設置の空調と比較して、より熱負荷から近傍となることから、高いパフォーマンスを発揮できることになります。
水冷と空冷の選択が可能となり、冗長化もしやすく、かつ空調機の幅が300mmと600mmと、筐体を無理なく選ぶことができます。
空調機1台当たり20kW~40kW程度の冷却ラインナップがありますが、オンプレミスでも活用できるものとして、空調機1台当たり5kW程度の小型タイプのラインナップもあります。

 

リアドア(RDHx)*Rear Door Heat eXchanger

ラック背面側(リア側)に設置する冷却装置となります。
IT機器の排熱を直接冷却するため、空冷サーバに対して、最近傍で冷却が可能です。
2種類の方式があり、ひとつはパッシブ型でファンレス冷却となりますが、IT設備の排熱送風の動圧で、熱交換機を通す方式となり、ファン動力がないために、省電力となります。
もうひとつの方式は、アクティブ型となり、ファン付きとなります。
IT機器の排熱をファンで熱交換機を通す方式となりますので、安全性をより高められますが、パッシブ型と比較して、ファン動力があることから電力消費を伴います。
ですが、IT機器内蔵ファンのなりゆきではなく、しっかりとラック内空気圧力を制御できるため、安心感が得られます。
かなり大容量の排熱処理が期待できるため、水冷が主となり、リアドア1台当たり10kW~80kW程度まで、冷却が可能となります。

 

HDU *Heat Dissipation Unit

中央冷水システムが利用できない空冷空調のデータセンターで、液体冷却システムを使用できるようにしたものです。
水冷サーバを活用する場合、通常ですと冷水分配装置(CDU)を使って、冷水ループを作り、熱を排除します。
中央冷水システムがなければ、排熱処理ができなくなるため、代わりにサーバルーム内に排出させて、その排熱を空冷空調に賄ってもらうように工夫されたソリューションです。
独立した筐体と、ラックマウントできる筐体の2種類の空調装置となり、HDU1台当たり10kW~100kW程度まで、幅広い冷却が可能となります。
ひとによっては、LTA(Liquid to Air)という言いかたのほうが、想像しやすいシステムかもしれません。

 

液浸

これまでのサーバは、ファン付きの空冷冷却のシステムと、水冷冷却でループするシステムの方法がありました。
数年前からですが、これらとは冷却思想が異なって、全サーバをコンピュータ回路に電気伝導するリスクを冒さずに、冷却水(非伝導液)に浸すことができ、HPCを完全に冷却することが可能です。
液浸槽に直接浸すことで、冷却することになるので、液浸槽内の冷却水(非伝導液)は、チラーやクーリングタワーを経由させ、放熱させる必要があります。
ラック当たり100kW超の冷却が可能になるため、大容量の排熱ができます。

 

ダイレクトリキッドクーリング *DLC

CPUやGPUのヒートシンクに対し、直接冷水を供給することにより冷却するシステムとなります。
ダイレクトリキッドクーリングは、オンチップ冷却とも言います。
車のラジエーターを想像すると、よりわかりやすいかもしれません。
発熱媒体に、直接冷水を送るので、かなり効率的に冷却が可能ではありますが、ダイレクトチップヒートシンク以外の熱は、サーバルーム空調に依存する必要があり、全体で70%~80%近い熱は、ヒートシンクから発せられるため、それ以外の20%~30%は、CRACなどで対応します。
冷水は空冷と異なり、かなり効率が高いため、PUEの削減に大きく貢献することが可能です。
IT機器毎への送水が必要であるため、ヒートシンクの熱交換機の他、分配システム(マニホールド)や送水ホースが必要となります。

 

さいごに

さて、様々なIT機器冷却の方法について、ご紹介しましたが、わかりやすくお伝えできましたでしょうか?
我々DC ASIAでは、皆さまのデータセンターのご要望に応じた冷却のご提案が可能です。
簡単ではございますが、DC ASIAでご提案できるソリューションについて、以下を参照いただければと思います。

 

図:DC ASIAが提供する冷却ソリューションマップ

 

冷却設備製品
(リアドア空調/InRow空調/CDU/LTA/空調一体型ラック/コンテインメント/その他冷却設備製品)

 

 

 

 

 

 

 

DC ASIAでは、皆さまのデータセンターのコンサルテーションを積極的に行っています。
相談してみたら、データセンター構築や運営のヒントが見つかるかもしれません。
データセンターファシリティの知見について、DC ASIAは小さい会社ながらも自信を持っています。
小さな疑問でも結構ですので、是非ご相談ください。

ーーーーー
データセンターのコンサルテーションご相談あれこれはこちら
その他、ソリューションや製品関するご質問やご相談はこちら

 

人気記事

お気軽にお問合せください

お問い合わせ

まずはよくある質問をご覧ください

よくある質問


03-6362-6990

営業
時間
9:00 - 17:00
土日・祝日・年末年始を除きます

LINEで問い合わせる

右のQRコードから
お友達登録をしてお問い合わせくださいLINEで問い合わせる